bookee (ブーギー)で金融リテラシーを学ぶ ~「NISA(ニーサ)」について~
2019/03/16
■「NISA (ニーサ)」とは?メリットは?
株式投資や投資信託といった金融商品に投資をした場合、受け取った利益や配当には約20%の税金がかかるのが通常です。
でも「NISA(ニーサ)」を利用すると税金がかかりません。税金ゼロです。
「NISA」とは、2014年からスタートした個人投資家のための少額投資非課税制度のことです。NISA専用に開設した「NISA口座」を通じて行った上場株式投資・公募株式投資信託は、年間120万円を上限とする投資枠で利益や配当が得られた場合、最長5年間は非課税として優遇される制度をいいます。
ですから「投資なんて大きな金額を持っている金持ちじゃないと旨味がないんじゃないの?」と思っている庶民レベルでも手が届きやすい少額の投資(120万円以内であればいい)ができることが前提であって、しかもそこから生まれる利益が非課税になるのでとってもお得なわけです。
もし、NISAを利用しなかった場合、課税率が約20%ですから100万円×20.315%=203,150円が税金として納付せざるをえなくなります。そうなると100万円-203,150円=796,850円が実際の取り分ということになってしまいます。
ところが、NISAを利用していたら、その売却益100万円は非課税となるので全額を手に入れられることになります。NISA枠を利用するかしないかによって生じる203,150円の差は、とてつもなく大きいと言っても間違えないでしょう。
要するに、120万円までの投資ならば、その得た利益(配当金、売却益)がいくらであろうと、最長5年間は非課税になるということです。
そして、非課税ということは当然のことながら、面倒臭い確定申告も必要ありません。何度もいいますが、ホントにお得です。
もっとも、勘違いしないでほしいのは、非課税対象となるのは120万円を上限とする投資金額で購入した株で得られた配当金額および売却益です。だから、120万円で株を買って500万円で売れたとしたら、非課税対象金額は500万円ではなく500万円-120万円=380万円ということになります。
■「NISA」の目的は?
そもそも「NISA」が導入された目的は、金融資産ゼロ世帯が一定数いるなか、少しでも多くの人々が、手持ちの貯金や預金を将来に備えて投資に使ってもらい資産形成に取り組んでほしいということで設けられました。
そして、日本人はお金の面で将来に不安を感じながらも「金融リテラシー」が低いといわれています。この「NISA」の導入、利用をきっかけに投資経験がない人たちの上場株式の投資、投資信託に対する理解・関心が高まり、よって「貯蓄意欲」が増し、ひいては「金融リテラシー」の向上につながることが期待されます。
※「金融リテラシー」とはこちらを参照。
■「NISA」の利用条件は?(まとめ)
「NISA」を利用する際の口座開設などの事務手続きはちょっと複雑かつ煩雑です。でも、口座開設する金融機関に相談しながらやっていけば大丈夫です。
NISAの対象者 | NISAは日本国内に住む1月1日現在20歳以上の人であれば誰でも可能。 |
NISA口座開設 | NISAでは専用の「NISA口座」の開設が必要です。開設は証券会社や銀行、郵便局などの金融機関によるが、1人につき年間1口座しか認められない。ただ、1年ごとに金融機関を変更することはできる(但し、変更手続きは非常に煩雑)。 |
非課税投資枠 (※1.) | 新規投資額で毎年1年間120万円が上限 (5年間で最大600万円の投資枠が上限)。 |
非課税対象 | 上場株式・公募株式投資信託などの金融商品の配当や売却益が非課税対象となる金額。 |
非課税期間 (※2.) | 株式・投資信託等を購入した年を含めてその日から最長5年間(5年目の12月末まで)非課税で運用可能。 |
投資可能期間 (※3.) | 平成26年(2014年)~平成35年(2023年)までの限定期間。もし、2023年にNISAでもって金融商品を購入したら2027年までの5年間は利益を非課税で運用可能。 |
非課税期間満了後の取り扱い方 (※4.) | 非課税期間の5年間が満了した後の取り扱い方には3つの選択肢がある。 ①「売却」 ②「ロールオーバー」 ③「課税口座に移管」 |
(※1.)
NISAは年間1年ごとに120万円までの株式・投資信託等の購入しかできません。しかも、その枠はその年の1年間しか使えません。だから、その年は120万円のうち100万円までしか使わなかったから、残りの枠の20万円は翌年に繰り越して、翌年はその20万円がプラスされて140万円の非課税投資枠に増えるというわけではありません。
さらに言えば、例えば80万円で株を購入すると、その年の投資枠は残り40万円となりますが、年内にその80万円で購入した株を売却した場合、その年の非課税投資枠が再び120万円に復活するわけではありません。40万円のままです。120万円に回復するのはあくまで翌年です。
(※2.)
非課税期間とは税金がかからずに運用ができる期間のことです。5年間といっても必ずちょうどまるまる5年後に非課税期間が終わるわけではありません。例えば2015年初に株式などを購入したのであれば、2019年12月末でまるまる5年間で非課税期間が終えることになりますが、もし、2015年末に購入した場合は2015年も1年間として換算されるので、2019年12月末はまるまる5年間ではなく、むしろ実質4年間程度ということになってしまいます。つまり、2015年の1月に投資する場合も、同じ2015年の12月に投資する場合も、非課税期間の終了時期は同じことになるということです。
そういう意味で「購入した年を含めてその日から最長5年間」という表現になるのです。注意が必要です。
(※3.)
投資可能期間とは、NISA対象の商品を購入できる期間のことです。非課税期間と混同しないように注意してください。
(※4.)
5年間の非課税期間満了後の資産の取扱いには3つの選択肢があります。
① 非課税期間満了後は売却する
NISAでもって株式・投資信託等を購入して、5年間の非課税期間満了時に利益が出ていたのであれば、その分は非課税となるので、まさにNISA制度の恩恵に最大限に受ける結果となります。だから、売却すれば当然全額を手にすることができます。
但し、5年間の非課税期間が満了する前までに売却しないと課税口座へ自動的に移管されるので、早めの対応を要します。
もし、売却時に損失が出ている場合は、非課税制度のNISAを利用してきた意味が全くないことになります。
② ロールオーバーする
ロールオーバーとは、非課税投資枠で購入し運用してきた株式・投資信託等を5年間の非課税期間満了後もそのまま翌年のNISA非課税投資枠に移して引き続き非課税で運用することをいいます。これはこれまで保有してきた株式・投資信託を新たにNISA枠で購入したものと同様に扱われます。よって実質的に非課税期間が最長5年間延長したことになります。つまり、ロールオーバーはこれまで保有してきた金融商品全てをそのままそっくり翌年に移すと考えてもらっていいです。
当初のNISAは、非課税期間満了時に120万円を超える利益がでていても、ロールオーバーできるのは非課税投資枠の120万円までしかできませんでした。もし、150万円になっていて利益分の30万円は売却するか、特定口座(一般口座)のいわゆる課税口座に移管するしかありませんでした。
でも、2018年6月1日からは120万円を越えてどんなに大きな利益を上げていても、その利益全てを含めてロールオーバーできるようになりました。例えば、期間満了時に投資金額120万円が150万円になっていた場合、その150万円全部を翌年にロールオーバーできるということです。つまり、ロールオーバーできる上限がなくなったということです。
もっとも、翌年に150万円全額をロールオーバーできるとしても、その年の非課税投資枠(120万円)は使い果たしてしまっているので、その年に新たに非課税投資枠で株式・投資信託を購入することはできません。120万円の枠内で新たに購入できるのは翌々年からです。
ところが、もし、非課税期間満了時に120万円から80万円に下がってしまって、その80万円をロールオーバーするときは差額の40万円分は非課税投資枠として残っているので、その年にその範囲内で新たに株式・投資信託を購入できます。
③ NISA口座から課税対象となる特定口座(一般口座)に移管する
NISAの非課税期間が満了後は、当然同じ商品を全額課税口座の特定口座(一般口座)に移管することもできます。というよりも、期間満了後に①や②といった手続きをとらないままでいると自動的に特定口座に移管されてしまいます。その際は金融商品をその時の時価で購入したとみなされます。
これまで述べてきたように、NISAでは非課税期間満了時点での利益が非課税対象となります。だから、NISAでもって120万円を投資して5年間の非課税期間満了時点で150万円に上がったら、その差額30万円は当然非課税となります。
但し、その150万円を課税対象となる特定口座に移した後にさらに上がって170万円になったら、その口座は課税口座ですから、差額の20万円については課税対象となります。
また、NISAで非課税期間満了時に120万円が70万円に下落してしまい、その金額を課税口座に移した後に90万円に上がった場合、当初の120万円と比べてもまだ30万円の損失ですが、課税口座に移した後は20万円上がっているので、その20万円については課税対象となってしまいます。損失を被ったにもかかわらず、さらに税金を支払う羽目になるのです。
ところで、もし期間満了時の150万円を「まだ売却はしたくない。これからも運用を続けたい。」という考えならば、②のNISAを続けてロールオーバーするのが良いのですが、翌年はその資金で別の金融商品購入し運用を続けたいと思っているのであれば、ロールオーバーはできないので課税口座での運用ということになります。
■「NISA」のデメリットは?
NISAの非課税枠は、投資する側にとってはとても魅力的ですが、NISAにはNISAだからこそのデメリットもあります。その中での最大のデメリットは下記の①②二つです。
① 損益通算ができない
「損益通算」というのは、例えば、A証券会社とB証券会社にそれぞれNISA以外の特定口座を持っていたとします。A証券会社では50万円の利益、B証券会社では50万円の損失を受けた場合は、両者とも売却すれば投資での利益と損失は相殺されてチャラ(50万-50万=ゼロ円)でにできるということです。だから課税はされません。
ところが、上記の例でB証券会社での投資がNISAであった場合、NISA枠で損失が生じた損失は損失はないものとみなされるので、損益通算はできないのです。そうなると1番目の例では50万円、2番目の例では100万円に対して課税されます。
② 3年間の損失の繰越控除ができない
「3年間の損失の繰越控除」というのは、特定口座内での取引で1年間のトータルで損失が生じた場合、確定申告をすることによって、翌年以降3年間に渡って損失を持ち越せるということです。
例えば、
2015年:50万円の損失を生じた場合、確定申告により翌年以降3年間にわたり繰越。
2016年:10万円の利益があったが、前年からの繰越損失で相殺。残った40万円の損失を確定申告により翌年に繰越。課税ゼロ。
2017年:20万円の利益があったが、前年からの繰越損失で相殺。残った20万円の損失を確定申告により翌年に繰越。課税ゼロ。
2018年:30万円の利益があって前年からの繰越損失で相殺。3年間の繰越損失はこの年で終了。相殺後の10万円の利益が課税対象。
ところが、2015年に生じた50万円の損失がNISA枠だったら、先に述べたようにNISA枠での損失は損失がなかったとみなされるので、繰越損失はできず2016年から2018年までに上げたそれぞれの利益は全て課税対象となってしまいます。
NISA口座とNISA以外の口座を同時に運用しようと考えている人は、以上のようなデメリットがあるのでしっかりと理解しておくべきです。
③ 配当金を受け取るときの注意すべきこと
これは、デメリットというわけではありませんが、損をしないためにも注意すべき点があります。
NISAでの運用は当然配当金でも非課税対象になります。ただ、NISA口座を作ったら、配当金の受け取り方法は必ず「株式比例配分方式」にしておくことが大切です。受け取り方法として下記の3つがあります。
・配当金領収証方式・・・・・・郵便局や銀行で直接受け取る
・登録配当金受領口座方式・・・銀行で受け取る
株式比例配当方式以外だと、配当金に課税されてしまうからです。
■ 投資に対する考え方で「NISA」に向き不向きな人
〇NISA口座への投資が向かない人
• 短期売買(数日~数ヶ月)をしている人
• 短期的に利益をあげたい人
〇NISA口座への投資が向いている人
• 数年単位の売買を検討している人
• 長期投資を検討している人
• 投資先が1つしか少ない人